「もうプレーしたくない」――バイエルン移籍の裏側
移籍市場の名物ジャーナリスト、ファブリツィオ・ロマーノによると、セネガル代表FWニコラス・ジャクソンはチェルシーに対し「もうこのクラブでプレーする気持ちはない」と強い姿勢を示したという。
良好な関係から一転、スポーツ面での断絶
ジャクソンは日常的な人間関係やロッカールーム内での関係性については良好だったとされる。しかし一方で、クラブのスポーツ面での対応に失望を募らせ、決定的な亀裂が生まれた。ロマーノは「ジャクソンは、チェルシーとの間で築かれてきたものがサッカー面では完全に壊れてしまったと感じていた」と報じている。
急転直下の交渉ストップ
事態が動いたのは、同僚リアム・デラップが負傷離脱したことがきっかけだった。前線の駒不足を恐れたチェルシーは、バイエルン・ミュンヘンや選手の代理人に対し、進行中の交渉を止めるよう通達。しかしこの“ブロック行為”が逆にジャクソンの不満を爆発させ、「これ以上チェルシーでプレーしたくない」という決定的な意思表示につながった。
バイエルン移籍成立、買い取り義務付き
結果として、バイエルン・ミュンヘンはジャクソンを1年間のレンタルで獲得し、2026年夏には完全移籍が義務付けられる契約を結んだ。レンタル料は1650万ユーロに設定されており、バイエルンにとっては実質的な長期補強となる。
チェルシーへの影響と今後の展望
チェルシーにとって、この移籍は攻撃陣再編の象徴とも言える。若手の成長を信じつつも、主力級を手放す選択を強いられた背景には、クラブの一貫性を欠いた補強戦略や選手マネジメントがある。ジャクソンのように関係性が悪化し、意欲を失う選手をどう防ぐのかは今後の大きな課題となる。
一方で、バイエルンにとっては即戦力のストライカーを確保できたことは大きい。ブンデスリーガの連覇と欧州制覇を狙うクラブにおいて、ジャクソンは新たな得点源として期待されている。
まとめ
移籍市場の裏側で起きた「クラブと選手の信頼関係崩壊」は、現代フットボールの縮図でもある。ジャクソンのチェルシー離脱劇は、クラブ経営と選手のキャリア設計がどのように交錯し、時に衝突するのかを改めて示すケースとなった。