マンチェスター・ユナイテッドといえば、世界有数の名門クラブ。莫大な収益を誇るにも関わらず、今やVIPゲストの無料プログラムが廃止され、試合スタッフに配られていたシリアルバーすら削減される始末だ。
The Guardian紙が「Austerity United(緊縮財政ユナイテッド)」と揶揄するこの状況は、ただの冗談では済まされない。クラブは過去3年間で3億1,300万ポンド(約570億円)の損失を出し、プレミアリーグの「収益と持続可能性ルール(PSR)」違反の瀬戸際にある。移籍金の未払い額も**4億1,000万ポンド(約750億円)**に達し、財政の立て直しに必死だ。
その結果、クラブはコストカットの名のもとに、選手の売却を加速。アレハンドロ・ガルナチョやコビー・メイヌーといった未来のスター候補すら放出対象になっているというから驚きだ。かつて「ユース、勇気、成功」を掲げ、4000試合以上連続でアカデミー出身選手を起用してきたユナイテッドの伝統が、今まさに崩壊しようとしている。
金がないなら、若手を売ればいい?
ガルナチョはチェルシーへ5000万ポンド(約92億円)で売却される可能性があると報じられ、メイヌーも「必要なら売る」という姿勢がクラブから示されている。The Guardianはこれを「ユース選手の売却は純利益と見なされるため、財政難のクラブにとって最も都合が良い」と皮肉る。
この手法、どこかで見覚えがあると思ったら、そうチェルシーのアカデミー売却戦略だ。メイソン・マウント、ルベン・ロフタス=チーク、ルイス・ホール……。次々とアカデミー出身の選手を売り払い、財務状況を調整するやり方だ。
だが、ユナイテッドはチェルシーとは違う。クラブの象徴である「地元の若手育成」が揺らげば、ファンの反発は避けられない。
削減すべきはシリアルバー?それとも経営陣の無駄遣い?
経営陣は「コスト削減」と言うが、その実態を見れば呆れるしかない。
• 試合スタッフの無料シリアルバー廃止
• VIP用の無料マッチデープログラム廃止(QRコードでどうぞ)
• 年末ボーナスの100ポンド→40ポンドのM&Sバウチャー化
• 子供・高齢者向け割引チケットの一時停止
一方で、エリック・テン・ハフの解任に2140万ポンド(約40億円)、不調のマタイス・デ・リフト獲得に移籍金と給与合わせて約100億円以上を費やし、さらにはたった5カ月間でダン・アシュワース獲得に高額な費用を投じた。
この金があれば、シリアルバーなんて何十年分でも配れたはずだ。
ファンの声 vs. 経営陣の本音
新たにクラブの支配権を握ったジム・ラトクリフは「マンチェスター出身のユナイテッドファン」として経営に乗り出したはずだが、モナコ在住の億万長者が本当に地元のクラブに愛着を持っているのか? The Guardianは、「ラトクリフはクラブの伝統を単なる商品として扱っている」とバッサリ切り捨てる。
最近、クレイヴン・コテージ(フルアムのホーム)でファンがラトクリフに向かって「俺たちは北部の人間だ、頼むよ」と訴えた。だが、彼は車の窓を閉めて無視。「来たばかりの経営者が、地元の文化やファンの思いをどこまで理解しているのか?」という疑問は拭えない。
ラッシュフォードの未来も不透明
クラブの顔とも言えるマーカス・ラッシュフォードの去就も揺れている。新監督ルベン・アモリムのもとで出場機会を失い、バルセロナ移籍を希望しているという報道もある。The Guardianは、アモリムが「ラッシュフォードは練習があまりに酷く、GKコーチを使った方がマシ」とコメントしたと伝えている。
かつては少年時代のラッシュフォードが、ウェイトリフトの車を待つ姿がGoogleストリートビューに写っていたという微笑ましい話もあったが、今や彼も「商品」の一部にすぎないのかもしれない。
ユナイテッドはどこへ向かうのか?
The Guardianは「ユナイテッドは過去3年間で競争力を失った。それは単なる財政問題ではなく、クラブの方向性が見えないことが原因だ」と指摘する。
今のマンチェスター・ユナイテッドに必要なのは、本当にシリアルバーの削減なのか?それとも無計画な移籍戦略を見直すことなのか?
ジム・ラトクリフ率いる「緊縮財政ユナイテッド」がこれからどこへ向かうのか、世界中のファンが注目している。
果たして、この道の先にあるのは再建か、それともさらなる崩壊か?