イングランド代表DFマルク・グエヒのリバプール移籍は、成立寸前で突然の中止となった。英紙『ガーディアン』の報道によれば、クリスタル・パレスとリバプールは移籍金3,500万ポンド(約70億円)で大筋合意に達しており、選手はすでにメディカルチェックの一部を終えていたという。さらにクラブ側は送別用の映像を準備し、プライベートジェットまで手配されるなど、移籍成立は秒読みと見られていた。
しかし、事態は急転直下で覆った。オリヴァー・グラスナー監督が「キャプテンを失うなら辞任も辞さない」と強硬に主張。クラブ会長スティーブ・パリッシュ氏は監督の意向を受け、締め切り直前に移籍をキャンセルする決断を下した。グエヒは契約を残しているものの、代役を確保する時間が残されていない状況での放出はクラブにとってリスクが大きすぎた。
移籍破談に揺れる選手の心境
この突然の展開に、グエヒは大きなショックを受けているという。移籍の準備が整えられ、クラブからも「送り出される」雰囲気があっただけに、本人にとっては精神的に非常に複雑な結果となった。クラブ主将としてチームを引っ張ってきた誇りはあるが、自身のキャリアの新たなステップを阻まれた失望感は小さくない。
情報筋によれば、グエヒは現時点でパレスに残る意向を持ちながらも、主将としての立場を続けるべきかどうかを熟慮しているという。今回の移籍破談をきっかけに、クラブに対する信頼関係や自身の役割について見直す可能性があると伝えられている。
クラブと監督の事情
クラブ側にとっても、この決断は苦渋のものだった。財務的には大きな収入となる移籍金を逃したことになるが、監督グラスナー氏の意向を無視すればチーム内に大きな混乱が生じる恐れがあった。契約が来夏までとなっている同監督にとって、主将を失った状態でシーズンを戦うことは現実的ではなく、パレスの強化計画は大きく狂う可能性があった。
この背景には、プレミアリーグ全体での移籍市場の過熱もある。リバプールは積極的に補強を進め、最終盤まで選手獲得に動き続けたが、交渉の駆け引きやクラブ間の事情が複雑に絡み合った結果、グエヒの移籍は幻となった。
今後の展望
今回の一件は、グエヒのキャリアにとって重要な転機となり得る。イングランド代表としても評価を高めている25歳のセンターバックにとって、ビッグクラブでの挑戦はキャリアの自然な流れとも言える。そのチャンスが土壇場で閉ざされたことにより、今後は冬の移籍市場、あるいは来夏に再び移籍話が浮上する可能性は高い。
一方で、パレスに残るシーズンが「新たな試練」となる可能性もある。キャプテンとしての責任を果たすのか、それともリーダーシップの座を譲り、新たな道を模索するのか。グエヒ自身の選択とパフォーマンスが、クラブの今季の成績、さらには来季以降の移籍市場に大きな影響を及ぼすことになるだろう。